第1回定例会が終りました。大田区一般会計予算に賛成、国民健康保健事業特別会計に反対の討論をしました。
大田・生活者ネットワークは第1号議案・2018年度大田区一般会計予算、第3号議案・後期高齢者医療特別会計予算、第4号議案・介護保険特別会計予算に賛成し、第2号議案・国民健康保険事業特別会計に反対の立場から討論いたします。
まず特別会計から意見を述べさせていただきます。国民健康保険は今は加入者の多くが非正規で働く人や失業した人、退職した人など無職の人が多くなっています。低所得であるのに、医療費の増大を支えるために1人当たりの保険料負担は毎年のように上がり、生活を圧迫しています。国保制度改革が行われて、東京都の責任で国保の運営が行われることになりましたが、財源の安定的な見通しはしめされず、今後は法定外繰り入れの解消・縮減を目指すというのですから、保険料はこのままどんどん上がっていくということなのでしょうか。国民皆保険の崩壊を招きかねません。国費の投入により、安心な社会保障制度へとするべく、急ぎ構造的、抜本的な改革に組むべきで、反対いたします。
後期高齢者医療特別会計は75歳以上の高齢者の増加や医療費のさらなる増加を見越して、賦課限度額を引き上げることにより被保険者の総所得金額の合計額の増加、その結果、中間所得層の保険料負担が軽減されることになります。応能負担を強めることで安定的な財源確保の道を導きだしていることを評価いたします。
介護保険特別会計においては介護保険料の上昇は苦しいところですが、所得に応じたきめ細かい多段階の設定と応能負担を強める形になっていること、介護予防の取り組み強化は評価できる点です。今後、在宅医療や定期巡回・随時対応型介護看護事業の拡充で望む人が住み慣れた自宅での生活を全うできる体制作りをさらに進めていただきたいと願います。
一般会計予算に対する意見を子ども施策を中心に述べさせていただきます。大田区は過去最高の2787億7600万円余の予算を提案しています。安心して産み育てられる環境作り、待機児対策として保育園の整備に努力をしていることは評価いたしますが、保育ママや幼稚園など、多様な選択が積極的にできるような情報提供も一方では必要です。また育児休業を活かすことができるように保育園入園の予約制を取り入れて2年目に入ります。安心して育休中を過ごすことができる環境を今後さらに拡充して、全ての人が当たり前に育休を十分とれるような体制を探っていただきたいと思います。
また病後児保育は1か所増えましたが、保育定員の伸びに対してあまりにも少ない状況です。訪問型病児保育の導入やファミリーサポートに退職看護師を組み入れ、病後児保育にも対応する体制を作るなど、急ぎ環境整備について研究していただきたいと考えます。また園庭のない保育施設が増えている中でいかに子どもの成長発達に必要な体験ができているかどうか、確認していく作業が求められます。また家庭の教育力が落ちているといわれる昨今、保育士の力量が問われますが、そのためには保育士自身の定着、継続して働ける職場環境が重要です。
在宅子育て支援では、一時預かりの場所の増設が1か所ありましたが、まだまだ地域にばらつきがあり、少なくしかも料金が高いことに対しては、検討を要望いたします。
不登校対策はひきこもりにしないためにも少しでも社会とのつながりの中で、自立の道を見つけていけるためにも重要です。不登校の予防のために、今、予算で中学校で、学級集団調査を実施するということですが、さまざまなストレスを抱えている子どもに対して、この生徒一人一人に対するアンケート項目はたとえば「休み時間に1人でいることが多い」とか「クラスの中で浮いていると感じることがある」と聞くなど、集団の中の自分を強く意識させるもので、集団圧力にストレスを感じている生徒にさらに追い打ちをかけることにならないか、心配です。むしろ集団を意識することなく、自分の意見を持ち、自分を発揮できて、自信や自己肯定感を育むことができるようなプログラムや、教師との対話の時間を作ったり、スクールソーシャルワーカーの増員など、生徒に寄り添った方策の方が有効ではないでしょうか。また小さい時から十分に友だちと関わる遊びを充実させるなど、幼児期からのプロセスに踏み込むなど、小手先ではない、子ども自身の生きる力を養うことに目を向けるべきです。しかし、このような調査をしなければならないと考えるほど、現場での学級運営が大変になっているということでしょう。
さて阿部彩さんを座長にした「子どもの貧困調査」から3年目になります。21%の子どもが生活困難層ということですから40人学級で8人です。経済的に困難な層ほど子育てにも困難を抱えている親が多い、「うつ」の傾向がある、子どもの自己肯定感が低い、などさまざまなリスクが浮き彫りにされました。基礎自治体が子どもの最初のセーフチィネットです。この調査が学校教育のなかでどのように施策に置きこまれていくのか、効果を生み出していくのか、注目していきたいと思います。
また学校だけではなく、さまざまな窓口が困難さの発見、支援へのつなぎとなることを願います。
地域のコミュニティが失われてきている昨今、市民力で課題解決型の社会を創っていくことが重要で、区民協働の視点、「学び、出会い、まちづくりへの参画、助け合い」など、積極的に区政の課題解決に向けての市民参画へのモチベーションを高めることが必要です。昨年は中央防波堤のことで、日曜開催の議会が開かれましたが、日常的にも区民に議会を開いていくこと、参画しやすい環境をつくるべきです。議会費における「海外親善調査」に対しては、区政への還元の目的を明確にし、区民への報告会は必ず行うべきであると考えます。
私は教育や福祉、人への投資が大事だと考ますが、今回、産業経済部が「産業クラスター形成支援事業」として障害者用スポーツ用具の開発に予算を計上しています。大田区の町工場が協力してメーカーとの連携で、2020年オリンピック・パラリンピックに向けて車椅子用バスケットボール用の車いすを開発したことは、これからめざすべき、インクルージョン、共生社会に大いに寄与するものになるのではないかと期待をするところです。大田の物づくりの力を世界に発信するチャンスであるとともに、人に優しいバリアフリーのまちづくりの推進につなげていけるものではないでしょうか。毎年市民団体によって開催されている「ユニバーサル駅伝」では、障害がある人もそうでない人もいっしょにゴールをめざすゲームを行いますが、それと同じように、これをきっかけに大田の子どもたちがパラリンピックの意義を深く感じる機会になることを願います。
区内の小学校に通う今度5年生になる車いすユーザーのお子さんが、学校全体の配慮で楽しく充実した毎日を送っているとの話を聞きました。運動会の時は、騎馬戦などできない競技の時は担任と相談して、マイクで解説をする役目をもらったり、ダンスの時には最も移動しなくてすむ隊列の中央に位置づけてもらって、移動が必要な時は友だちが押してくれるなど普通に運動会にも参加、プールも介助員がつき1年生から毎年、参加できているそうです。なわとびの授業でも回す役をもらって友だちと一緒に楽しんでいるそうです。体育館の舞台で表彰されるときやクラス委員として全校生徒に話をしなければならないときなど、先生たちがひょいと舞台に上げてくれるそうです。靴を履き替えるときに困っていると、他の学年でもだれでもさりげなく助けてくれるそうです。
避難訓練のとき、もし災害があったら、と不安になったそのお子さんに、担任ではない先生が、「何かあったらおんぶして逃げてあげるからだいじょうぶだよ」、と声をかけてくれたことでそれから安心してすごしているということも聴きました。
この学校の障害にごく自然によりそい、お互い助け合い、それぞれの持ち味、役割を発揮していける学校風土、障害があっても共に生きていけるという感覚を育てている先生方の配慮、チームワークは子どもたちにとって生きた教育になっていることでしょうし、そこで育った子どもたちは、きっと共生社会を創っていく担い手になるのではないでしょうか。すばらしい教育の実践といえるでしょう。
期せずして、大田区の町工場が高い技術を結集して、車椅子バスケット用の車いすを作ったわけですが、日常的には、子どもたちと町工場はあまり接点がなく、町工場を肌で感じることはめったにないのだと思います。これらを結びつけていくこと、コーディネートも行政の重要な仕事ではないでしょうか。ぜひ今回の大田の技術がパラリンピックの車椅子の選手に貢献するというニュースを子どもたちに知らせ、何事もイベントだけで終わるのではなく、子どもたちには「学ぶこと」、「技術を身に着けること」がすみやすい社会を創ること、人を幸せにすることにつながることを知り、夢や希望、職業観にもつなげてほしいと願います。
車いすユーザーの子どもの幸せな学校生活も町工場の技術も、世界にも誇れることではないかと思います。大田区全体の活性化をめざして2018年度の予算が区民の希望をさらに膨らますものになることを願って大田区一般会計予算の賛成討論といたします。