コロナ禍の「人権」を考える ―見えないことを知る― シリーズ1 子ども編 開催報告
3月27日(日)オンライン併用にて『コロナ禍の「人権」を考える』シリーズ第1回を開催した。
会場に5名、ZOOMで8名が参加した。
講師 周藤由美子さん(ZOOM参加)
日本フェミニストカウンセリング学会理事。フェミニストカウンセラーとして女性のためのカウンセリングルーム「ウィメンズカウンセリング京都」で活動。アサーティブネス・トレーニング講師。行政・大学等のセクシャル・ハラスメント専門相談員。
今日のコロナ禍は非常時であり、非常時では男性と女性は異なる影響を受けること、女性や子どもに対する暴力が増加することが明らかになっていることから、女性や子どもが被害を受けた時、個人が尊重される救済はあるのかなどを伺った。
はじめに、進行役の西川有理子(生活者ネットワーク会員)さんより、国立成育医療研究センターのwebサイトに「新型コロナウイルスと子どものストレスについて」トピックが掲載されていること、「こころ×子どもメール相談」が開設していること、2021年11月に内閣府が招集した「こども政策の推進に係る有識者会議」報告書が公表されていることが紹介され、「大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査報告書」をみると、より弱い立場の子どもや若者にその影響は色濃くあらわれていると報告した。
―周藤さんのお話―
コロナ禍で女性への暴力は15%増えたといわれている。「性暴力被害者ワンストップ相談支援センター」が全国50か所程に設置されているので活用して欲しい。性犯罪に対する刑法は明治時代から変わらずにいた時間が長かった。最近まで警察に被害を訴えているにもかかわらず被害者側に“被”があっただろうという前提での取り調べが進み、加害者の刑罰を証明するための裁判でさえ被害の実態を説明することが求められる。身体も心も傷ついている状態で幾重にも二次被害に晒されて訴えを断念することも多い。被害者は心的ストレス症になり、何かのきっかけでフラッシュバックが起こるため対話も難しく、時に呼吸困難にも陥ることがあり仕事に戻れないなど生活が厳しくなるケースもある。被害者は長い年月苦しみ続けることになる。
性暴力について「あなたが望まない性的な行為はすべて性暴力である」と説明している。その加害をする人物は見知らぬ人よりも顔見知りの人が多い。加害の要因は性欲ではなく、むしろ支配欲やストレス解消が主である。SNSを使った悪質なグルーミング(手なずけ)行為やオンライン上においても性暴力が起こっている。
水着で隠れる大事な部分は人に見せない・触らせない・見ない・触らない、という「プライベートゾーン」ルールは、子どものうちから学ぶことが大事である。性的同意などについて、タブー視せずに幼いころから伝える必要性がある。
専門家の間では、相談に来た人や子どもの様子を見るときは『「トラウマインフォームド・ケア」の眼鏡をかけて見る』という合言葉がある。「トラウマがあるかもしれない」という視点を持って対応することが求められている。
子どもは被害を被害と認識できにくい。救済のひとつとして、子どもの支援に関わる人の被害に関する認識と子どもの様子を捉える力が求められる。
―参加者からの意見・感想―
・被害にあう前の段階での教育が必要
・海外での発達段階に応じた性教育のように日本でも早急に人権に配慮した教育の着手が重要
・被害を訴えにくい性暴力の問題を日本のメディアがなかなか取り上げていなかったが、この頃やっと報道を見かけるようになった
・保育や教育現場での性暴力についての処罰規定はどうなっているのか(教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律)
―司会・進行 西川有理子―
社会の中にあるさまざまな暴力やハラスメントが「ある」と知ることで被害に気づくことができるようなると思います。子どもたちを加害者にも被害者にも傍観者にもしないため、被害・加害を未然に防ぐための鍵は、大人の気づきと行動であることを学びました。
私たちの意識も子どもたちへの教育も十分とは言えないなか、これからも考えて行きたいと思います。
以上