貧困の連鎖を断ち切る。子どもの学びの場・居場所の充実を求めて

6月15日から始まった第2回大田区議会定例会が26日に終了しました。
今回の議会では「不登校・夜間中学・若者の居場所」について質問いたしました。貧困の連鎖は看過できない問題です。
全文と答弁をご報告いたします。
ごいっしょに子どもたちの環境を考えていきましょう。
 

 

以下全文です。

 


持続可能な社会のために、貧困の連鎖を断ち切ること、子どもの学びの場・居場所の充実を求めて質問いたします。

まず不登校についてです。
2016年12月「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」いわゆる「教育機会確保法」が成立し、国並びに地方公共団体の責務として「全ての児童は、その能力に応じた教育を受ける機会が確保され、社会で自立的に生きる基礎を培う」ことが明記され、「学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援」、「休養の必要性」が盛り込まれました。
これに先立っての通達では「不登校はだれにでも起こりうるもので、問題行動ではない」「不登校の児童生徒やその保護者を追い詰めることのないように配慮する」と述べられており、学校と距離をおかざるを得ない子どもにもその状況に配慮した“学ぶ権利”が認められたといえます。

日本では不登校が40年以上前から問題になっており、平成27年度は国公私立の全小中学生の不登校児童生徒数は12万6千人、3年連続の増加だといいます。この法律は、これまでの「学校復帰政策」だけでは問題の解決にはならず、むしろ追いつめられた子どもが2学期を目前に自殺するケースがあとを絶たない等の現状認識に立ち、また教育基本法、子どもの権利条約の理念に照らして、不登校児童生徒に対して効果ある対策をめざす一歩といえます。

大田区の不登校児童は2015年、小学校では116人、中学校では398人。適応指導教室への通室者が小学生で16人、中学生で67人、と年度途中で在籍校へ復帰する生徒、進学する生徒もあるものの多くの子どもたちが家庭で生活している状況がわかります。そして義務教育の過程を十分経ないで、人との関わりをあまり経験しないで中学を形式卒業してしまうというのがこれまででした。区内のある都立高校に伺うと、中学で不登校気味だった生徒が高校でも不登校になりがちであること。経済的困窮やネグレクトなど背景には家庭の問題もあるが、勉強についていけない、人間関係を築けないなどで、中退する生徒が多く、昨年は年間40名で、1年生に多く、全体の3分の2だということでした。また基礎力テストをしたところ、8割が小学校卒業程度以下の学力しかないという結果だったそうです。今、高校は、基礎学力をつけること、中途退学者をなくすこと、高校卒業後、就職も進学もしない生徒が増えているので進路決定者を増やすことを目指しているとのことでした。

東京全体の都立高校全日制の中途退学者率の平均を大田区内の都立高校は大きく上回っています。また中退者の多くは1年生です。もちろん都立なので区内の生徒ばかりとは限りませんが、小中学校時点での問題を持ち越して高校に行っている生徒が少なくないことが懸念されます。低学力、無気力、不登校に付随する子どもの心の不安や不安定さに対して、できるだけ早く対策を練り、問題の先送りを避けなければなりません。“学びの主体は子どもである”ということを踏まえて、質問いたします。

【1】お聞きします。

「教育機会確保法」が施行され、不登校対策を学校復帰だけを目的としない方向性が示されました。“学校復帰”、“学校に適応させる”という目的のもとに運営されている適応指導教室を大田区はどう検証し、その結果どのような目的で進めていきますか。

<答弁(教育総務部長・水井靖)>
本区の適応指導教室は、いわゆる「教育支援センター」に該当し、集団生活への適応、情緒の安定、基礎学力の補充、基本的生活習慣改善等のための相談・指導、学習指導を行うことにより、児童・生徒の在籍校への復帰を支援し、社会的自立に資することを目的とした学校外の施設です。教育機会確保法においても、学校復帰を目指さないとうことはなく、第11条において、その整備が努力義務とされております。
適応指導教室では、ひとり一人の状況に即した指導プログラムを作成し、学習指導だけでなく、教育相談、体験活動、集団活動を通して学習意欲や生活意欲の向上を図り、学ぶことの大切さとその喜びを体感させ、自信と意欲を持たせる指導・支援を行っています。
その結果、27年度は、全通室者83名中25名が在籍校に復帰している他、卒業を迎えた28名が中学・高校へ進学しており、在籍校への復帰のみならず進学についても一定の成果を挙げております。
今後も、学習に意欲を感じ始めた不登校児童生徒に対し、本人の気持ちに寄り添った呼びかけを行うとともに、一人ひとりの学習の進捗状況に応じた指導を行うために環境整備を行い、在籍校への復帰、進級や自らの選択による進学を支援し、学習意欲の向上を図ると共に、自立した生活を送れるように、支援・指導に努めてまいります。

不登校対策には、なにより子どもの実態把握とニーズを考えることが重要です。いじめ、体罰、LGBT、発達障害、てんかんの発作が心配で学校に行けない子どももあるでしょう。その状況を理解してその子どもの成長・発達を最大限応援することが大田区の役割ではないでしょうか。たとえば基本的な漢字が読めて理解できることは社会生活に必要で、行政に出す申請用紙の説明書きが読めなければ、さまざまな制度を活用することもできません。自立して生きるには、最低限の知識と、人との関わり方、コミュニケーション能力と生きる意欲は必要です。
高校までを含めた学校間、またフリースクールとの連携も必要です。学校復帰だけの政策では、今後どれだけのひきこもりの若者を生み、また精神疾患にもつながっていくかわかりません。分析と研究、対策推進の中核を担う機関は教育センターになるのではないかと考えます。

【2】お聞きします。
適応指導教室に来ることができない、外へのアクセスを確保できない生徒に、学ぶ権利をどのように保障していきますか。子どもの学習権を保障するためにも多様な学習活動の場の情報提供やあるいは連携が必要だと思われますが、どのように進めていきますか。そのための教育センターの役割を教えてください。

<答弁(教育総務部長・水井靖)>
これまで大田区教育委員会では、区内4か所の適応指導教室での学習指導やメンタルフレンドの派遣を行っているほか、夜間中学での不登校経験者の受け入れ等により、教育の機会の確保を行ってまいりました。
現在は都のモデル事業を活用し、モデル校において、適応指導教室への送迎や学習指導、レクリエーション指導等を行う訪問支援員の配置などを行って、学習機会の確保の強化を図っているところです。
教育機会確保法では、教育機会の確保に向けた地方公共団体の責務が明確化され、法の規定により文部科学省が策定した基本指針において、児童生徒が安心して教育を受けられる魅力ある学校づくりと共に、不登校児童生徒に対する支援として、必要な情報提供や助言、ICT等を通じた支援、家庭等への訪問による支援の充実、情報提供として、不登校児童生徒の保護者に対し、支援を行う機関や保護者の会などに関する情報提供等が揚げられております。詳細については、不明な点もあり、国や都の動向を注視していく段階にあると考えておりますが、必要な情報提供や助言、不登校児童生徒への支援を行う機関や保護者の会などに関する情報提供について情報収集を行い、教育センターが中心となって対応してまいります。

夜間中学についてです。
これまでは不登校のために学力がついていなくても形式的に中学校を卒業せざるを得なく、そのせいで夜間中学に入る資格を失っていました。しかし「確保法」により、卒業していても不登校など学業を修めることが不十分であったものは夜間中学に入ることができるようになりました。これは画期的なことで、意欲さえあれば、いつでも学び直しができるという道が開かれたわけです。

都内には8校しかない夜間中学ですが、大田区には65年の歴史を持つ糀谷中学校夜間学級があり、現在48名が在籍しています。うち42名は外国人で、6名が日本人。うち4名が不登校を経験した既卒者(いったん卒業した生徒)で、さっそくこの法律を適応しているわけです。ある不登校経験者は、夜間学級に入って、多国籍の人たちの中で、周りと比較や競争することもなく、自分をありのままに出せて、自信がついたとのこと、今では堂々たる生徒会長です。そのほか、日本に出稼ぎにきて、仕送りをする一家の大黒柱のネパールの青年や家族を大事にする文化、様々な価値観に日本人の生徒たちは影響されて、大きく成長するということをお聞きしました。

少人数で年齢も10代から60代まで、多文化共生という環境だからこそ、得るものがあることを教えていただきました。夜間中学の存在意義、学び直しの場であるということの広い周知が不登校経験者に必要です。

しかし、糀谷中の場合、外国人入学希望者が年々増えており、定員いっぱいで、現在も5人待ってもらっているとの話でした。また日本語が全くわからない外国人が多いので、抜き出しで日本語教室を行うなど、少ない部屋でのやりくりにも教師たちは苦労をされています。「確保法」ができて、今後、夜間中学の役割が期待されるところですが、対応できる施策や具体的な仕組みについてお考えでしょうか。

【3】お聞きします。
夜間学級は、不登校生徒の学び直しのためにも活用されるはずですが、現在は、外国人在籍者が8、9割と圧倒的に多く、しかも全く日本語がわからない外国人も多く、さながら日本語学校です。小学校のうちに日本語をもっと身に着けていれば昼間の中学校に行く能力の生徒も多いとのこと、小学校での日本語教育の充実をはかるか、あるいは夜間学級で日本語教育をするのであれば、専任教師配置など、外国人対応の適正化、不登校の生徒の学び直しを推進するのであれば、受け入れ態勢に向けて新たな配慮や点検が必要だと考えます。今後、不登校経験者がどのくらい夜間学級に来ると予想し、確保法に伴う受け皿としての拡充をどのように考えていますか。

<答弁(教育総務部長・水井靖)>
区内にある夜間学級は、議員お話のとおり、糀谷中学校夜間学級として、昭和28年9月1日に設置され、60年を超える歴史がある学級となっております。学習内容は中学校9教科で、理解や習熟の程度などに応じて編成したクラスで授業を行っております。入学者は15歳以上で義務教育を修了していない方や、様々な事情により中学校の課程の大部分を欠席していた等の事情がある場合には、義務教育の目的に照らして、再度中学校に入学を認めることが適当と認められる、との考え方が示され、本区の夜間学級においても不登校経験者の受け入れを行ってきたところでございます。教育機会確保法に基づく基本指針においても同趣旨の考え方が示されており、教育委員会といたしましても、都による教員配置や施設整備面の課題がありますが、不登校経験者等の入学希望の動向に常に注意を払い、可能な限り文部科学省の通知や基本指針の趣旨を踏まえた対応に努力してまいります。

若者の居場所と相談機能についてお聞きします。
先日、区内のこども食堂を訪れたある区内都立高校2年生の女の子が、学校を退学したことを話してくれたそうです。理由はお父さんが事故で働けなくなり、外国人のお母さんが働きにでることになって、下の弟ふたりのうち保育園に入れていなかった方の子の世話をするために学校を休んでくれといわれ、度々休むうちに勉強についていけなくなり、友だちにも家庭の事情を話せず、学校にいづらくなり、やめてしまったということです。

この場合、ちょっとだれかに相談すれば高校を辞めずに済んだのではないかと思われます。父親のことでは労災の制度を調べる、保育園のことでは緊急的な措置を保育サービス課に相談、一時的な生活再建のための保護申請など、何か方法がなかったのだろうかと思います。お母さんのパート収入では貧困に陥る可能性は高く、現代の貧困が孤立化と隣りあわせだということを表しているように感じます。都立高校の先生のお話でも中途退学者の半数が学校に何も相談せずに辞めてしまうそうです。

首都大学教授で「子ども・若者貧困研究センター」センター長の阿部彩さんは、貧困が子どもの低学歴を誘引し、低学歴が非正規労働者となるリスクを高め、それがまた低所得、生活困窮になるという貧困の連鎖の代表的な経路を紹介しています。

日本財団が2015年にまとめた報告書「子どもの貧困放置と社会的損失」によると、貧困層と言われる生活保護世帯、児童養護施設に在籍している子どもたち、一人親世帯の現在の15歳の子どもたちが、全て一般の子どもたちと同じ比率で、高校に進学し、大学進学も就職も同じ比率になると仮定して計算すると給料による収入は2.9兆円多くなり、社会保険などの納付も1.1兆円増えるので、合わせて4兆円の増益が出るのだそうです。このレポートからは、高校進学率だけの改善より高校中退率を改善する方に効果があるということも示唆しています。社会の持続可能性、安定性という長期的な視野に立った時も貧困対策は重要です。最大の成長戦略は貧困対策であり、教育だという人もいます。

区内には中高校生の居場所が少ないことがよく指摘されていますが、もっと上の年代までも含めて若い世代を応援する機能はぜひ必要です。

大田区からの委託事業で生活困窮家庭への学習支援をしている代表者に話を聞いたときに、信頼関係が生まれる中で子どももその親も家庭の悩みを相談してくるようになるとのこと、“指導より共感”だといっていました。内容によっては大田区の自立支援係と連携をとり、必要な対策を話し合うということでした。
このように実際の支援の現場で信頼のできるコーディネーターに相談ができれば、問題を一人で抱え込まず解決できる事例も多いのではないでしょうか。高校中退を防ぐ方策が大事ですが、いったん高校をやめても通信制、定時制、単位制など進学の道はあることなど情報提供を受けたり、若者同士の交流ができたりする場が必要です。区内で、しかも夜間でも相談にいける場所が必要です。

【4】そこで質問です。
高校を中退すると所属するところがなくなり、その先を把握することが困難です。貧困への入口といえるかもしれません。気軽に相談に行ける若者の居場所を作れないでしょうか。先に紹介した高校2年生の女子生徒の最初の相談はこども食堂でした。「ちょっと相談してみよう」というハードルの低い相談窓口で、支援の端緒が作れれば、大切な決断をする前にアドバイスを受けられるのではないでしょうか。新蒲田一丁目の複合施設には、中高生の居場所が置かれるそうですが、学習支援、就労支援、進学支援につながる情報の提供も受けられる相談機能はありますか。

<答弁(こども家庭部長・後藤清)>
現在、(仮称)新蒲田一丁目複合施設と羽田一丁目複合施設の整備計画において、設置に向けた検討を進めているところです。
居場所機能としては、多目的スペースや音楽スタジオ、談話室等を設け、支援スタッフには、教員資格等を有する中高生と価値観を共有できる若い人材も指導員として配置する予定です。
気軽に利用しやすい居場所とする一方で、定期的なイベント等も組み、中高生の主体的な活動や仲間づくりなどの交流支援を図ってまいります。また支援スタッフが、利用を通じて信頼関係を築き、家庭や学校などの人間関係や進路など、思春期ならではの不安や悩みの相談にも対応し、相談内容によっては、他機関が実施する支援事業にもつなげ、中高生の健全育成を図ってまいります。
今月発表された内閣府の「子ども・若者の意識に関する調査」では、「ほっとできる居心地の良い場所としての“居場所”の存在」が多いと回答した若者ほど、「生活の自立」や「社会への貢献」、「対人関係」等について前向きな将来像を描く傾向があるとなっています。
今回の国の調査結果なども参考にして、引き続き、関係部局が連携し、様々な居場所で、何かあった時に支えとなれる相談支援の充実に努めていきます。

時代の大きな流れの中で、社会のひずみの影響を子どもたちが受けていることに私たちはもっと敏感にならなくてはなりません。大田区の小中学生の約4分の1が就学援助を受けています。地域差が大きい大田区です。格差は見えにくいながらも確実にあり、貧困、そして生活の厳しさからの愛着障害や学業不振のスパイラルを生んでいます。一方、均一性を求められがちの学校では競争と評価が子どもにも教師にもストレスを課してはいないでしょうか。今の子どもたちの実態と本当のニーズに心を寄せていきながら、私たちの作った社会や制度を点検していきたいと考えます。全ての子どもたちが自ら学ぶ喜びを知り、希望を抱ける大田区であることを願って質問を終わります。