聴講「認知症ケア」を考えるシンポジウム

デンマークから、認知症サポーター、家庭医、理学療法士など5名が来日して自国での認知症の人の捉え方やそれぞれの職務内容が紹介された。デンマークは、国民全員に担当ケースワーカーや家庭医が決まっており、生活するうえで困ったこと・心配なことを相談するところからケアが始まる。国は、疾患のある人を待つ体制から、専門家が疾患のある人のところへ出向き、必要な支援を提供する形に変えたのだと説明された。基調講演を行った千葉忠夫氏(N.Eバンク・ミケルセン財団理事長)は、会場の皆に「今幸せですか」と問うた。さらに千葉氏は幸せの国の尺度を“自由・平等・博愛”で検算するよう言われた。

  検算(自分に問うてみること)
  ◆社会や家庭において責任を持った上での自由がありますか。
  ◆老若男女・障害の有無に係らず、平等ですか。
  ◆寝かせきりの老人、自由に暮らしたいと願う障害者はいませんか。

 デンマークでは寝かせきりの老人を見ることはないという。日中寝ている老人は昼寝をしているか、末期的状態にある方だけだとか。

 日本でも、施設型から在宅型へというフレーズで介護保険がスタートしたはずだが、最近再び施設を見直すような動きもみられるように感じる。自分の生き方や全うの仕方は誰かに依存することなく決められる社会にしていきたい…。
かつてのデンマークも精神疾患と思われる人は病院に収容するのが日常的だった。しかし、病院にいる患者ひとりひとりに目を向けたとき、少しの助けがあればひとりでも暮らせる人がいることを発見した。個人の思いを尊重した上で、できるだけ普通に暮らす人に近い生活ができるようサポートする体制に変化してきたとの話しだった。

 核家族化した家庭内での介護は、介護される側・する側の両方にストレスが掛かりすぎる危険があります。また、規則正し過ぎる施設の生活に馴染めない人もいるのではないでしょうか。諦めて、我慢をする生活が最期にあるのは豊かな国とはいえません。どこから手直ししていくことが近道でしょうか。将来の自分の暮らし方を“行政”の判断に委ねてよいでしょうか。暮らしやすい制度への転換は、ひとりひとりの意識が間違いなく大きな比重を占めています。
「あなたは今幸せですか?」
(や)